Vol.196 『カラマーゾフの兄弟』と『聖書』からの引用


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 文豪ドストエフスキーが幼い頃、『カラマーゾフの兄弟』の作中に出てくる『旧・新約聖書の百四の物語』で読み書きを学んだというエピソードは広く知られている。「美しい挿絵の入った」「読み書きの勉強をしたのもこの本によってだった」と、『カラマーゾフの兄弟』の登場人物であるゾシマ長老の口を借りて、文豪は記している(「ゾシマ長老の人生における聖書」)。
 『カラマーゾフの兄弟』には『聖書』からの引用が多数ある。ページをめくると、すぐに「よくよくあなたがたに言っておく。一粒の麦が地に落ちて死ななければ、それはただ一粒のままである。しかし、もし死んだなら、豊かに実を結ぶようになる(『ヨハネによる福音書』12;24)」とエピグラフにもある。作中において、パイーシイ神父が朗読する『ヨハネによる福音書』2章の「ガリラヤのカナ」は言うに及ばない。いったいどれだけ『聖書』からの言葉が引用されているのだろうかと思い、(原卓也訳の新潮文庫を例に)ちょっと調べてみた(あくまで、ざっと大まかに)。

 上巻(記載ページ数と引用章)
 19 ルカによる福音書2章
 48 ヨハネによる福音書20章
 80 ルカによる福音書11章
 92 エレミヤ書31章
 180 ヨブ記
 234 民数記22章 バラムのロバ
 460 ルカによる福音書15章 放蕩息子のたとえ
 476 ヨハネの黙示録22章
 476 マタイによる福音書24章
 476 ヨハネの黙示録8章
 478 マタイによる福音書24章
 479 マタイによる福音書9章
 484 マタイによる福音書4章
 493 ヨハネの黙示録7章
 499 ヨハネの黙示録17章、18章

 中巻(記載ページ数と引用章)
 13 創世記1章
 46 ヨハネによる福音書12章24節
 54 ヨブ記1章
 61 創世記
 62 エステル記
 62 ヨナ書
 62 ルカによる福音書
 62 使徒行伝 サウロの呼び掛け
 90 ヨハネによる福音書12章24節
 91 ヘブル人への手紙10章31節
 115 ルカによる福音書15章 金持ちとラザロの寓話
 182~4 ヨハネによる福音書2章 カナの婚宴
 

 下巻(記載ページ数と引用章)
 440 ヨハネによる福音書10章 よい羊飼い
 441 マタイによる福音書7章

 調べた際に、登場人物たちによる「キリスト」といった類の単語(たとえば上巻241ページ以下)や『聖書』を引き合いに出した会話(たとえば中巻の66、122ページ)等を省いたけれど、見落としている箇所があるかもしれない。あるいは上に挙げた中で、たとえば中巻(13ページ)の創世記1章について、上巻(235ページ)にある「いえ、べつに。ただ、神さまが世界を創ったのは最初の日で、太陽や月や星は四日目なんでしょ。だったら、最初の日はどこから光がさしたんですかね?」と関連する(繰り返しになる)ことから、そうした例も同様に省いた。
 さて、ここで冒頭の話題に戻り、僕自身、読み書きを覚えた本は何かと考えてみた。おそらく幼稚園児の頃に読んだ絵本だったに違いない。しかしながら、ドストエフスキーのように書名までは思い出せなかった。

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