Vol.109 『聖書』の名言 『マタイによる福音書』第六章三四節について


 『聖書』に記された名言の内、代表的な一つの聖句は『マタイによる福音書』第六章三四節の

  だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。

であろう。
 

 上の聖句は『マタイによる福音書』において、イエスの語ったセリフになっているが、ブルトマンによれば、実際の出所は当時のことわざのようなもので、教会の編集作業による言葉であるという。
 さらには少し前の箇所(六章二七節)に次のような聖句が記されている。

  あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。

 同じく共観福音書の『ルカによる福音書』には、一二章二〇節において、

  すると神が彼に言われた、『愚かな者よ、あなたの魂は今夜のうちにも取り去られるであろう。

とある。
 ブルトマンによれば、「神は単純に、人間から思い煩いを取り去って、人間が自分の世界でくつろぎ、気楽にふるまえるようにしてくださる方ではない(『ブルトマン著作集』8巻、27ページ引用)。
 「思いわずらうな」と語りかけ、励ましてくださっているのかと思いきや、恥ずかしながら、僕は『聖書』の名言を自分の都合に良いように解釈していたことに気付かされた。

0 件のコメント:

コメントを投稿