Vol.111 イリューシェチカの葬式。石のそばでの演説


 久しぶりに名古屋市営地下鉄に乗車した。名古屋の都心部はいつも自転車で移動しているが、今朝は台風の接近ということで、やむを得ず。
 

 時間調整も兼ねて、オアシス21の銀河の広場にあるベンチに腰掛けて、『聖書』を読んでいたら、ハトとスズメが足元へやって来た。
 

 「エサを与えないでください」という看板があるのを見つけた。ハトとスズメはきっと周辺にあるマクドナルドなどの飲食店の利用者たちの食べこぼしを探していたのだろう。
 いったい何を書きたいのかと言えば、その瞬間、僕は自分が大好きなセリフを思い出していた。スネギリョフ大尉が主人公アリョーシャに語り掛ける、あのセリフを。

 「夜中にあの子が寝ているわきに、わたしが坐っていましたら、だしぬけにこう申したんですよ。『パパ、僕のお墓に土をかけるとき、雀たちが飛んでくるように、お墓の上にパンの耳を撒いてやってね。雀がとんでくるのがきこえれば、お墓の中に一人で寝ているんじゃないことがわかって、僕、楽しいもの』って」(ドストエフスキー著・原卓也訳『カラマーゾフの兄弟(下)』新潮文庫)。

 『カラマーゾフの兄弟』は僕に『聖書』を読むキッカケを与えてくれた本だ。エピローグの三「イリューシェチカの葬式。石のそばでの演説」を久しぶりに再読したら、そこに今の僕が求めていた答えが記されていた。答えがこんな身近な足元にあったなんて!
 「カラマーゾフ万歳!」

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